SIPについて

当研究室では、内閣府が主導し国立健康危機管理研究機構が研究推進法人を務める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)(課題名:統合型ヘルスケアシステムの構築)の研究開発を担当しています。

研究開発テーマ

患者の疾患状態及び施設間動態の可視化を可能とするシステム開発による地域医療構想の実現(C-2)

研究開発機関

東京大学

研究開発責任者

康永秀生

共同研究開発機関

  • 自治医科大学
  • 佐賀大学

研究開発期間

令和5年度~令和9年度

研究開発の概要

研究開発の目的

現在、種々の保健・医療・介護のデータベースはばらばらに存在しており、患者さん一人一人のデータを時系列で追跡することができません。このことは、保健と医療の連携、医療内での連携、医療と介護の連携の足かせとなっています。

そこで本研究では、県レベル・地域レベルで保健・医療・介護のデータを連結し、一人の患者さんを長期に追跡できるデータベースを構築します。それにより、地域における患者さんの動態や、病気が患者さんの動態に与える影響などを可視化することができます。それらの情報を患者・医療機関・行政などが共有し、地域におけるケアの改善や医療資源の配分の効率化等に活かすことができます。そのことを通じて、患者さん一人一人を生涯にわたってケアする統合型ヘルスケアシステムの実現に繋げることを目的とします。具体的には、県レベル・地域レベルの保健・医療・介護連結データを用いて地域医療分析を行い、データに基づく施設間連携の支援、行政における地域医療構想への支援などを通して、地域の実情に合った効率の良い地域医療システムの実現を目指します。

また、構築された連結データベースを広く学術研究に応用し、保健・医療・介護の現場における疑問を解明する実証研究を多数行うことにより、現場の医療行為の改善や、患者さんおよび医療従事者の意志決定支援に貢献することも目的とします。

さらに、人材育成という観点から、データベースの構築や分析に長けたデータサイエンティストのみならず、保健・医療・介護のリアルワールドデータを分析し新しい医学知を発見できる臨床研究者を養成することも目的とします。

研究開発の進め方

東京大学と自治医科大学を中心とし、対象の地域を拡大する過程で各地の大学を共同研究開発機関に加えて、次の研究開発を実施します。

県レベルの健診・医療レセプト・介護レセプトの連結データベース構築・分析

自治体と連携して、県レベルの特定健康診断・保健指導、医療レセプト、介護レセプトの連結データベースを構築します。各自治体と契約を締結して各種データを取得した上で、新たにIDを作成し、個人を識別できる情報はすべて削除した上でデータベースを構築します。

レセプト情報には医科・DPC・歯科・調剤のレセプトが含まれ、それぞれが施設ごと・患者さんごと・月ごとに発行されます。施設をまたいだ連結を行うことで、異なる医療機関を受診したり、転院したりしても追跡することが可能です。すなわち、患者さん一人一人の病気や診療の履歴を時系列で追跡でき、施設間の移動も分析できます。

データサイエンティストおよび臨床疫学研究者の人材育成

医療分野のデータについて、世の中には大きな誤解が1つあります。それは、各種のデータフォーマットを統一し、共通のIDを付与し、データ間で連携できるようにすれば、ひとりでに有用な知見が生まれる、というものです。しかし実際には、基盤構築が進んだ後のデータを利活用するという段階で、データの構造や内容を十分に理解し適切なデータ加工や分析ができるデータサイエンティストが多数必要です。さらに、リアルワールドデータから新しい知を創造するには、医療に関する専門知識を有し、なおかつ疫学・統計学の知識を備え、新規性・実施可能性のある研究テーマを発掘し、適切な研究デザインを構築し、精緻な統計解析と結果の正しい解釈をした上で、論文執筆に至る、臨床疫学研究者が多数必要です。医療に関する専門知識を有する者は既に十分に多く存在するものの、そのうち臨床疫学研究を実践できる人材はごくわずかであり、その育成が急務といえます。

研究開発責任者はこれまで、医療リアルワールドデータ利活用人材育成事業の講義等を行ってきました。この教育環境を、本研究開発における人材育成にも役立てます。さらに、研究開発責任者がこれまでに開発した研究人材育成プログラムを応用し、データサイエンティストおよび臨床疫学研究者の人材育成を進めます。

論文発表

  • Wada Y et al. Treatment strategies for pelvic organ prolapse and postoperative outcomes in older women with long-term care needs: A population-based retrospective cohort study. Int J Gynaecol Obstet 2024;166:1323-9.
  • Honda A et al. Mortality, analgesic use, and care requirement after vertebral compression fractures: a retrospective cohort study of 18,392 older adult patients. J Bone Joint Surg 2024;106:1453-60.
  • Ohbe H et al. Hospital and regional variations in intensive care unit admission for patients with invasive mechanical ventilation. J Intensive Care 2024;12:21.
  • Hosoi T et al. Implementation status of comprehensive geriatric assessment among older inpatients: a nationwide retrospective study. Geriatr Gerontol Int 2024;24:904-11.
  • Kameda S et al. Early corticosteroid use and short-term outcomes in pediatric bacterial meningitis: a nationwide study in Japan, 2014-2022. Pediatr Neurol 2025;164:97-104.
  • Makimoto H et al. Association between periprocedural anticoagulation in ventricular tachycardia ablation and postprocedural stroke and intracranial hemorrhage. JACC: Asia 2025;5:595-8.
  • Taniguchi J et al. Association between preexisting long-term care needs and in-hospital mortality and long-term outcomes in older inpatients with pneumonia: A retrospective cohort study. J Gen Fam Med 2025;26:326-33.
  • Sato S et al. Validation of recorded diagnoses of acute kidney injury among surgical patients in the Japanese Diagnosis Procedure Combination database. J Epidemiol 2025 epub.
  • Kubo T et al. Association between embolic agent choice and complications after transcatheter arterial embolization for colonic diverticular bleeding. Eur Radiol 2025 epub.
  • Matsuo Y et al. One-year mortality of early versus delayed hip fracture surgery stratified by pre-fracture care need levels: a retrospective cohort study. Ann Clin Epidemiol 2025 in press.

リンク

更新日:2025年12月25日